家の予算は年収の5倍……。
こんな話を多分一度くらいは聞いたことがあると思います。住宅に関する「常識」はたくさんあります。
家の予算は年収の5倍
返済比率は月収の30%以内
頭金は2割以上入れるべき
現在も当然のようにこんなアドバイスをするFPはいますが、どれも間違いです。
予算が年収の4倍でも6倍でもなく、5倍である理由は?
頭金が1割でも3割でもなく2割の理由は?
この質問に答えられるFPはおそらく居ません。なぜならいずれも根拠が無く、正しいアドバイスではないからです。
■年収の5倍と返済比率30%のズレ。
例えば世帯年収が700万円の家庭ならば、年収の5倍は3500万円です。
一方、返済比率(収入に占める返済額の割合)を30%で考えると毎月の返済額は17.5万円、金利が1%ならば借入額は約6200万円になります(35年ローンの場合)。
すでにこの時点で3500万円と6200万円で全く整合性が取れていません。現在は金利が昔と比べて異常に下がっていますから、こういったズレが生じてしまいます。
加えて、年収の9倍ものローンを組もうとする人は居ませんし、一般的に住宅ローンの借り入れ額は年収の7〜8倍程度と金融機関側で上限を設けています。当然のことながら借りられない額を目安と言われても意味がありません。
そもそも年収だけを基準に考えることは、年齢や子供の人数、親族からの援助の有無、趣味に掛かる金額の違い、住宅にかけたい金額の違いなど、様々な条件を全て無視しているわけですから全く意味のない数字です。
■頭金2割もウソ。
頭金が2割も同様です。昔は住宅ローンを組むには住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構・フラット35)でローンを組むのが一般的でした。借入額の上限は物件価格の8割だったことから、頭金は2割という数字が出てきたのですが、現在はそういった制限もありません。したがって2割であるべき理由は全くないわけです(頭金も貯金もゼロで良いということではありません)。
昔は住宅ローンの計算が簡単には出来なかったため、5倍や30%といったキリの良い数字は計算をせずに判断をするための一つの目安として使われていたのではないかと思います。
ただ、なぜこのような間違ったアドバイスがいまだに残っているのでしょうか。おそらくお金を貰ってアドバイスをするFPがほとんど居なかった事が原因ではないかと思います。
代金をお客さんから頂けばアドバイスに責任が生じ、多数のFPがいれば競争することでアドバイスが進化するはずです。しかしそのようなことは起きておらず、あらゆるビジネスが厳しい競争にさらされて進化していく中でFPのアドバイスだけが時代に取り残されているような状況です。その象徴が冒頭に書いた「年収の5倍」や「頭金は2割」です。
FPのやるべき仕事は制度や仕組みを説明することではなく、根拠の無いアドバイスをすることでもなく、顧客の不安・不満を解消すること、そして理想のライフプラン実現のためにアドバイスを提供することです。
シェアーズカフェは2011年の開業以来、無料相談は一切行わず、個人向けの有料相談のみを提供してきたことでレッスン・アドバイスは常に進化を続けています。
お金に関する悩みはシェアーズカフェにご相談いただければと思います。
シェアーズカフェ・店長中嶋。
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