住宅ローンマニアや保険オタクにファイナンシャルプランナーは務まりません。
〜シェアーズカフェのブログがFPっぽくない理由〜 

 



 

当店にお客様として訪れる方の殆どが「シェアーズカフェのブログ」や各種メディアの記事をご覧頂いています。何年も前にブログで当店を知って頂き、住宅購入のタイミングになったので相談に来ました、といった方も多数いらっしゃいます

 

ブログを読んでいる方に説明は不要かと思いますが、ブログの内容はあまりFPっぽくありません。「FPっぽい内容」は住宅、保険、投資、家計、年金などになると思いますが、これらをブログで取り上げることはほとんどありません。

 

ブログで書く内容は多岐に渡り、その結果各種メディアで意見を求められたり、寄稿することも度々あります。

 

メディア掲載、取材協力のページでも紹介していますが、例えば以下の様なものがあります。

 

*フジテレビ「直撃LIVEグッディ!」・豊洲市場で100億円の損失について会計に関する解説

*読売新聞・ライザップのビジネスモデルの分析

*プレジデントウーマン・女性の雇用について

*ジンジュージュ(人事向けメディア)・働くママと会社の関係

*週刊プレイボーイ・マクドナルドの経営悪化について

*日経アソシエ・整理術について

*週刊プレイボーイ・グラビアアイドルに関するインタビュー

 

いずれも普段の個人向けの相談からはズレているように見えるかもしれません。

 

■FP事業とメディア事業。

当社はFP事業ともう一つメディア事業があり、シェアーズカフェ・オンラインというウェブメディアを運営しています。これは税理士・司法書士・社労士などの士業や大学教授、コンサルタントなど各種専門家が情報発信を行うウェブメディアで、編集長として書き手を執筆指導しています。

 

シェアーズカフェ・オンラインは経済メディアとして、ヤフー!ニュースやスマートニュース等のメディアに配信をしており、東洋経済オンライン、プレジデントオンライン、ダイヤモンドオンラインなどの大手メディアと真正面から競争をしている状況です(規模で言えば極めて小規模ではありますが)。

 

メディア事業やFPっぽくない記事を書いている面だけを見ると、一般的なFPからはズレて見えることは間違いありません。

 

■FPはお金の専門家……?

FPはお金の専門家……多分住宅や保険の相談をしたい人はそんな風に考えているかもしれません。では実際の相談の現場はお金の知識だけで対応出来るのでしょうか。答えはNOです。

 

もちろん、FPとして住宅や保険、資産運用の知識を持っていることは大前提です。店長の中嶋は住宅ローンの本を書いているくらいですから、住宅購入は得意分野です。他の分野も高い相談料を頂くに見合った能力があると自負しています。

 

ただ、それだけで相談が出来るかというと実際はそうではありません。相談に訪れる方が一番気にしていることは例えば住宅であれば「買えるかどうか?」ではなく「買った後も問題なく生活できるか?」です。問題なく、の内容は人によりけりですが、子供の教育費を払える、老後も安心して生活できる、趣味にもお金をつかう事ができる、など人それぞれです(実際はもっと個別の話になります)。

 

当店が考えるファイナンシャル・プランニングとは「お金の視点から考える人生設計」です。その相談ですから、FPが提供するアドバイスはちょっと大袈裟に言えば「お金の視点から考える人生相談」になります。

 

例えば相談に訪れた方が6000万円のマンションを買っても大丈夫ですか?と相談をしている場合、その時点で少なくとも買えることは前提の相談なわけです。

 

つまりそこで行われる判断は実質的に買えるかどうか?ではなく、買った場合にどんな生活になるのか? 買っても大丈夫なのか? 買わなかった場合はどういった生活になるのか? という人生相談にほかなりません。「お金の視点から考える人生相談」に必要なものはお金の知識に加えて、あらゆる分野に関わる幅広い知見です。

 

■金融機関とFPの違い。

大勢の従業員が働き、それぞれの仕事が細分化している金融機関であれば住宅ローンマニアや保険オタクのような商品知識などの「細部だけ」に詳しい人が働く余地はあります。大企業のメリットは細部に特化した社員を多数抱えることで組織として価値を提供し、利益を出すことです。

 

一方、住宅・保険・家計管理・資産運用は全てつながっており、相談・アドバイスは金融機関で対応出来ない部分も多数あります。1人で幅広い分野をカバーする、といったことは通常金融機関では業務として求められておらず、相談をしてもまともな答えが帰ってくることはありません。

 

店長の中嶋がFPとしてやっていける、と確信を持ったきっかけが2つあります。金融機関で働く2人の友人の存在です。

 

都市銀行で働く友人は、融資の際の契約書を説明する業務についていました。その友人はローンの金利を計算する方法(複利計算)を知りませんでした。あくまで契約書を説明することがその人の仕事であり、融資に関わる他の知識は求められていなかったからです。

 

証券会社で営業マンとして働く友人は株を売っているにも関わらず、投資に関する知識はほとんどありませんでした。決算書を分析する手法や資産運用の理論を全くと言っていい程知りません。それで大丈夫?と聞くとお客さんに聞かれないから問題ない、お客さんは短期間で株価が跳ねる(上がる)銘柄を知りたいだけだから、といいます(実際にはそんな銘柄を事前に見抜くことは出来ません)。

 

2人の友人は金融マンとして極端に無能なわけではなく、極端に優秀でもなく、ごく標準的なレベルです。銀行で働く友人は契約書類の説明に関してはプロですがその他の分野については素人でした。証券会社で働く友人は商品知識はあっても投資の知識はちょっと勉強をしている個人投資家にも負けてしまうレベルでした。そしてこれはけっして珍しい状況ではありません。金融マンの「普通」がこれならばFPとして確実に食っていける、という確信を持ちました。

 

同時に、顧客から求められる能力はお金に関する知識に加えて、お金を手段としてどのように生活していけばいいのか、人生相談の相手として幅広い知識と発想力であることも容易に想像できました。

 

■投資の判断は損得で行うのが正しいのか?

書籍「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人」では外国人と日本人の夫婦にアドバイスをした話を書きました。文化的な背景が全く異なるご夫婦に満足して頂けるアドバイスを提供できたことはFPとしての自信につながっています。

 

お金に関する人生相談、と言ってもピンと来ない方も多いかもしれませんので、具体的な例を上げてみたいと思います。

 

親から相続した賃貸用のマンションをお持ちのお客様が相談に訪れたことがあります。相続してから10年ほど、それなりに賃貸業で収益も得られたが入居者が退去することになり、売却するか賃貸を続けるかで迷っている、といいます。事情を知らない人にとっては不動産を相続できるなんて羨ましいと思うかもしれませんが実際はそれほど簡単ではありません。不動産の管理は極めて煩雑な手間がかかります。

 

一般的なFPであればそもそも不動産投資に全く対応できない人も少なくありませんが、知識がある人ならば売却と賃貸でいくつかのパターンをシミュレーションして比較する、といったことをやるかもしれません。

 

ただ、自分はそれが正しいと思いません。その方はごく普通の会社員で不動産投資を仕事で行っているわけではなく、相続をしてからの話を伺ってもあまり楽しそうではありません。収益はそれなりに出ているようですが、普段は会社員として働いており、不動産投資の手間が重荷になっているようでした。不動産収入があれば確定申告も必要です。

 

「不動産投資は面倒ではありませんか?」と聞いてみると、できればやりたくない、入居者が入るかどうかでヤキモキしたり管理会社とやりとりしたりは面倒でしょうがない、と言います。売却価格もある程度想定出来ていましたが、その売却価格を賃貸で回収するには20年ほどもかかる計算です。しかもそれは空室が全くない前提でした。

 

自分の回答はそれならば売却していいのでは?というものです。不動産の価格は将来得られる収益(賃料)で決まります。相場並みの妥当な価格で売れるのであれば、売却と賃貸の継続はどちらが得か将来になってみないとわからないわけです。

 

同時に、売却をしてしまえば不動産投資にかかる手間はゼロになります。もし賃貸を続けて空室が続いたり将来不動産価格が下がってしまえば手間がかかった上に損をするという二重の損になります。

 

つまり損得の基準ではなく、手間をかけてでも収益を得たいのかどうか、という全く別の観点からアドバイスをしたわけです。不動産価格が高騰している現在、高値で売却した上に手間もかからずに済んだとなれば二重の得です。

 

「将来ハイパーインフレでも起きれば持っていればよかったのに、ということになりますけど、今の時点で合理的に判断をするのであればそれなりに高値で売れるタイミングですから、手間も無くなる売却でも良いのではないでしょうか?」とアドバイスをすると、お客さまはアドバイスに納得し、ホッとした表情で10年間の胸のつかえがとれたとおっしゃって頂けました。

お客様は結果的に売却で多少損をする事があっても手間が消えるメリットはそれ以上に大きい、と判断されたようです。
 
■「当たり前のアドバイス」をしています。

当店ではこのように、しっかりと根拠を示したうえでアドバイスをしています。不動産投資の判断基準は損か得かだけ、という思い込みがその人を縛っていたわけですが、本来の判断基準は楽しい人生を送ることが出来るか?です。これは住宅でも保険でも投資でも同様です。

 

不動産投資のアドバイザーならば投資を続けましょうといったはずです。

不動産の仲介会社ならば売却した後にそのお金でまた別の物件を買いましょうというアドバイスになってしまいます。

他の不動産投資家に聞いても、皆が経験談や自分なりの投資哲学を語るだけでその人にとっての正解を教えてくれる人は居ません。

 

当店が行ったアドバイスは不動産は需要と供給の関係でそれなりに妥当な価格が形成される、売っても貸しても事前にどちらが得かは分からない、築年数が経てば空室リスクは高まる、という不動産投資では極めて常識的で当たり前の知識を前提に、お客様の意向を伺って、手間がかからない方を選んだらどうでしょう?と当然のアドバイスをしただけです。そしてそのような「当たり前のアドバイス」を出来るFPははほとんどいません。

 

一例として不動産投資を挙げましたが、分野を問わずスタンスは同じです。

当店で一番多い住宅購入の相談では、単純に家を買う買わないの話にとどまらず、出産、産休・育休・時短勤務、働き方、雇用形態、経済環境など、様々な要素が関係します。それらを全て考慮したアドバイスをするには住宅ローンマニアでは対応出来ないわけです。

幅広い知識を総動員して、オタクでもマニアでもない、フラットなスタンスで当たり前のアドバイスを提供する……。

 

これが当店の方針です。

FPぽくない記事をたくさん書いている理由は「FPとしてより良いアドバイス・相談を提供するため」、というのが答えになります。
 

シェアーズカフェ株式会社 代表取締役社長 中嶋よしふみ